平成27年4月1日より、一般財団法人・育生会横浜病院院長を拝命いたしました長堀 優(ながほり ゆたか)と申します。68年の伝統を有する病院の院長という大役を拝命し、その責任の重さに身の引き締まる思いです。
これまで私は、主として消化器領域(食道、胃、大腸など)のがんの外科治療および救急医療を中心に、診療と研究に従事して参りました。このような経験をもとに、今後は地域の皆様により満足いただける医療の提供を目指し、そのお役に立てればと考えております。
医療の大きな柱は、治療(cure:キュア)と介護・養護(care:ケア)の2つのCとされますが、どちらかといえば、日本では、キュアが重要視され、私自身、これまでそのキュアの前線で仕事をしてきました。しかし、この先、急速に高齢化が進む日本の将来を見据えたとき、ケアが極めて重要になってくると考えられます。ことに、「団塊の世代(1947~49年生まれ)」の全員が75歳以上、つまり「後期高齢者」となる2025年には、日本の国民皆保険制度は大きな転換点を迎えます。このいわゆる「2025年問題」に向け、厚生労働省では、地域包括ケアシステムという政策を打ち出し検討を進めています。地域包括ケアシステムとは、高齢者が重度な介護状態となっても、日常生活を送ってきた住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように、在宅医療の支えを受けながら、医療や介護、生活支援などを受けることができるシステムです。そのなかで重要な役割を果たすことが期待される訪問診療を早くから導入し、さらに病院、特養、老健を併設した複合施設である当院は、超高齢化社会を迎えるにあたり、地域医療ケアの中心となって貢献する使命があるものと考えています。急性期の治療を終えた方々を、身体の状況に応じて、適切な施設ないしは在宅介護へとお繋ぎするために、職員一同、患者様、ご家族の皆様に共感、思いやりの気持ちを大切にしながら接してまいります。
その一方で、横浜市立大学病院、横浜市民病院、聖隷横浜病院、横浜保土ヶ谷中央病院等の近隣の高度な専門性を有する施設との連携や人事交流を進め、さらには、診療所・クリニックの先生方とも密に連携させていただき、より満足いただける医療を提供できますよう努力してまいります。今後ともどうぞよろしく御願い申し上げます。
◎ 著書の紹介
「見えない世界の科学が医療を変える―がんの神様ありがとう」 長堀 優(著)(でくのぼう出版)